南相馬市小高区にある小高ワーカーズベースが、ハンドメイドガラス事業として施設内で運営している
「アトリエiriser」にやってきました。
今回は、11月に新商品が発売されたばかりの「アトリエiriser」さんに、新商品開発のお話を聞いたり、ガラスアクセサリーを制作する現場について取材させていただきました。
「HARIOランプワークファクトリー小高」が設立されたのは2015年。
東日本大震災に伴う福島第一原発事故の影響で避難指示区域になってしまった南相馬市小高区に、
『若者がこの地に住んで「やってみたい」と思ってもらえる魅力的な仕事をつくろう』という目的のもと設立されました。
(1921年創業の耐熱ガラスメーカーHARIO社が立ち上げたガラスアクセサリーブランド「HARIOランプワークファクトリー」と2015年にライセンス契約を締結。)
それから4年後の2019年、女性職人たちの想いを直接届けるブランドを目指し、「iriser-イリゼ-」がスタートしました。
現在、工房で働く職人さんは7人。
全員が小高区で生活しており、もともと地元出身の方もいれば、移住してきた方もいらっしゃるそうです。
職人のうち2名はガラスの専門学校を卒業した方で、「アトリエiriser」でガラス製品をつくるために、この地に移住してきたそうです。
彼女たちのほとんどがガラス加工の未経験者のため、職人技術の継承を目的にしていたHARIOから、ノウハウなどの技術を学び、日々研鑚しながらお仕事に臨んでいます。
またイリゼでは、それぞれのスタッフが自身のライフスタイルに合わせた働き方ができる環境づくりに力を入れています。
子育てや介護など、職人さん一人ひとりの生活環境は異なります。
自身の裁量で無理なく技術を磨きながらお仕事ができるスタイルは、働きやすい環境づくりもされているなと思いました。
次に、2021年11月に発売されたばかりの新製品「ミズアオイ」シリーズを見せていただきました!!
イリゼさんでは、半年に一回程度のペースで新商品を発表しています。
今回はミズアオイの花をモチーフに、『ピアス』『イヤリング』『ネックレス』の3種類を考案、発売。
ミズアオイとは、ミズアオイ科ミズアオイ属の植物で、「ナギ(菜葱)」や「ミズナギ」という別名でも呼ばれることがあります。
かつては水田雑草としてよく見られましたが、現在は水路の改修や除草剤の使用などによって個体数が減少、国の準絶滅危惧種となっています。
そんなミズアオイが、東日本大震災の津波によって被害を受けた沿岸域にて、地盤の沈降や浸食の影響で再び姿を現すようになりました。
東日本大震災の津波がキッカケで眠っていた種が花開いたことを知ったイリゼの皆さんは、津波跡地で力強く花を咲かせたミズアオイの「美しさ」と「力強さ」に共感し、今回の新製品開発に至ったそうです。
デザインはミズアオイの花びらを再現しており、6枚の花びらと小さな雌しべが見えます。
実物を見てみると、思ったよりもボリュームがあって目を惹きます。
一方で、ボリュームがあるなら重さもあるのでは...と思っていましたが、軽い耐熱ガラスを使用しているためかとても軽く、ほとんど重みを感じず身につけられそうでした!
アクセサリーには、ミズアオイの花言葉「前途洋々」にちなんで「着けた人の未来に希望や可能性が咲き誇りますように」との思いが込められているそうです。
「ミズアオイ」シリーズの制作を担当するのは職人の一人、三浦知枝さん。
小高出身で、ガラス職人になる前から個人でハンドメイド作品を制作されていたそうです。
ご対応してくださった三浦知枝さん(左)、根本李安奈さん(右)。
『めしべ』の形や上下に生える花弁の再現など、細部にわたって造形にこだわりがあります。
この綺麗な曲線やそれぞれの花びらを形成するのは相当な技術力がなければできません。
実物を見て、そのすごさに改めて感動しました。
こちらは商品を入れる箱は落ち着いたデザイン。
「ミズアオイ」シリーズにマッチしていますね。
イリゼの商品では、箱もその商品にあったデザインのものを用意しているそうです。
とてもおしゃれなので、箱もとっておきたくなります。
最後に作業スペースで制作の様子を見せていただきました。
手元のバーナーから噴出する2000度もの炎で、細いガラス棒を熱しながら加工していきます。
作業の際には、高温の熱とともに紫外線も出ており、目を守るための特殊なメガネをかけて作業していました。
また、高温でガラス棒を熱すると、火が当たっている部分が激しく発光します。
そのまま見ると光が眩しすぎて何も見えず、作業に支障が出てしまいますが、このメガネを通して見てみることで光量を抑え、火の当たっている部分がはっきり見えるようになりました。このメガネ、すごいです!
さて、熱して一時的に柔らかくなったガラスを形成していくわけですが、高温のため手では直接触れることができません。
かわりに、熱に耐えられる素材で作られたピンセットやラジオペンチを改造したものなど、様々な道具を使いこなして形を作っていく姿は、まさに職人技。
ここまで手際よくできるようになるため、一体どれだけの経験を積まれてきたのかと感動しっぱなしでした。
職人の一人、三浦知枝さんは「最初は難しくて本当に大変でしたが、3年くらい続けてきたあたりから少しずつ感覚がつかめるようになってきました。」と話していました。
三浦さん曰く、一人前は3年~5年過ぎたあたりとのこと。とにかくやった時間だけ上達するとのこと。
技術はやった分だけ自分に返ってくる。
コツコツ努力の積み重ねが大事ということですね。自分にとても響く言葉です...!
「iriser-イリゼ-」では、一つ一つの製品を手作業で制作していますが、稀にガラスの中に汚れがあったり気泡などが入ってしまうこともあるそう。
そのため完成したものについては、品質のばらつきを防ぐために検品をひとつひとつ丁寧に行っています。
汚れや気泡の有無、傷、形、サイズなど様々なチェック項目をクリアしたものだけが店頭に並ぶところも、プロのこだわり意識がなければ成し得ないことだと思います。
万が一ここでチェック項目を通らなかった製品は、修理し再度製品として使用できるように検品しています。
作業スペースの横には、「iriser-イリゼ-」ブランドのショップも併設されており、その場で購入も可能です。
このショップでは、職人さんたちそれぞれのブランド名で制作した作品もあわせて購入することができます。
ガラスで形成された動物などのアクセサリーもあり、「iriser-イリゼ-」さんの雰囲気とはまた違った作品の数々が並んでいました。
2021年の3月に販売を開始した「起き上がり小坊主」を表現したガラス製品も見せていただきました。
ガラスの中にガラスが入っていて驚きです。どうなっているんでしょうか...
ほかにもガラスで作ったストローも見せていただきました。
模様の白い部分は、専用の粉を吹き付けることで表現しているそうです。
また、コーティングの役割もあるとのことで耐久性向上にもつながっています。
こういった新製品のデザインなども、職人さんたちが話し合ってアイディアを決めているそうです。
工房では、体験教室も可能です。(要予約)
『雫』か『葉』の形を実際に作ってみよう!というもの。
(人形の手に掛かっているものが体験教室で作れます。)
ガラス加工なんてしたことがない!と思う方が大半かと思いますが、職人さんがマンツーマンで教えてくれるので、初心者でも安心してガラス加工の世界を楽しむことができるようになっています。
あなたも世界にひとつだけのペンダントをつくってみませんか?
女性職人さんたちの想いを直接届けるブランドを目指す、「iriser-イリゼ-」。
小高区にいらした際は、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------
アトリエiriser
住所:〒979-2124...